2020 年のパンデミックを機に、当院もオンライン診療を全面導入しました。あれから 6 年、対面と並行して運用してきた経験から見えた「3 つの発見」をシェアします。
発見 1: 通院ハードルが想像以上に高かった
「通えなくなって治療中断」── これは精神科の最大の問題でした。うつ症状で外出が辛いのに、毎月通院しないと薬が処方されない。これでは続きません。
オンライン診療を導入してから、通院中断率が 32% → 11% に大幅改善しました。「治療を続けられる」ことが、回復の最大の要因だと改めて分かりました。
発見 2: 自宅環境こそが診療の手がかり
対面診療では見えなかった患者さんの「日常」が、オンラインで見えるようになりました。背景に積まれた本、机の散らかり方、お子さんの声 ── これらは、その方の生活リズムや家庭状況を雄弁に語ります。
「最近、部屋が片付かなくて」── そんな自然な会話から、抑うつ状態の悪化が早期発見できるケースが増えました。
発見 3: 地方在住の方からの予約が急増
2026 年現在、当院オンライン診療の患者さんの 約 38% が東京以外。北海道から沖縄まで、全国 32 都道府県からご予約いただいています。
地方では「精神科に通うこと自体が地域で噂になる」という問題があり、メンタル相談のハードルが東京以上に高いです。オンライン診療は、こうした 「物理的距離」と「心理的距離」の両方を解決する手段でした。
運用上の工夫
- 処方箋は薬局へ FAX 送付: 患者さん近くの薬局で受取可
- 初診から保険適用: 政府の規制緩和を活用
- カメラオフでも可: 顔出しが辛い日も、音声のみで診療
- 家族同席 OK: 患者さんの希望でご家族の Zoom 参加可
- 通信トラブル時の電話切替: 接続不良時はスマホ通話で続行
オンライン診療のデメリット
もちろんオンラインだけが正解ではありません。初診で複雑な症状の判断、身体症状を伴う初期診断、強い希死念慮があるケースは対面が望ましいです。
当院ではオンラインと対面を 柔軟に切り替えながら治療を進めます。「今日は対面で」「来月はオンラインで」のような使い分けが普通になりました。
院長より
オンライン診療は、メンタルヘルスケアの「最後の壁」を取り除く強力なツールでした。「通えないから治療を諦める」が、もう必要なくなった ── これが、6 年間運用して得た一番大きな発見です。